【評価:85点】ムネカワの財布Cram(クラム)徹底レビュー

Munekawaは(ムネカワ)日本製のオリジナル革アイテムを製作、販売する大阪のブランドです。

ここでは大阪を中心にシェアを伸ばしているムネカワについて解説し、財布のレビューもしてみたいと思います。

目次

ムネカワの解説

Munekawa(ムネカワ)は「物作りで心を豊かにする」という理念の元、ユーザー目線で長く愛用できることを第一に考えてものづくりを行っています。全国での知名度は正直まだ高くありませんが、大阪では評判が良く、着実に取扱店を増やしています。

“愛着を感じるものは、何気ない日常の中で、ふと心が癒されたりポジティブな気持ちにしてくれます。”

公式サイトのこの言葉からも、ユーザーのことを真剣に考えていることが伺えます。

その理念から生まれたムネカワのこだわりは、コンパクトであること、使い勝手の良さ、壊れにくいことが挙げられます。

コンパクトであることは持ち歩きやすく負担も少ないのがメリットですが、その一方で、収納力や使い勝手に不自由が出てくることも。しかしムネカワのアイテムは仕様に精密なアイデアを反映させることで見た目以上の収納力を実現し、コンパクトさと機能性を両立させています。

ムネカワのこだわりは自社サイトのブログでも見ることができます。製作過程や各商品の使い方のヒントや革のお手入れ方法など、商品を熟知しているメーカーだからこその視点で事細かに紹介しています。

「買ってもらえばそれで終わり」ではなく、「何年も使ったその先」のことを考えているムネカワの誠実さを感じます。

L-Zip wallet Cram

ムネカワでダントツの人気を誇る『Cram(クラム)』というL字ファスナー財布をレビューしていきます。

■ サイズ

開封してすぐに驚いたのが大きさです。縦9.5cm、横10cmほどしかありません。そして驚くほど軽いです。

厚みは2㎝ほどとこちらもかなり薄いですが、ファスナー式財布はスナップ式財布とは違い中身を多めに入れても比較的口が閉まりやすいので、中身を入れたらやや広がるでしょう。

ファスナーが取り付けられている革面は緩やかなカーブ状に裁断されており、スムーズな操作ができるよう配慮されているようです。

L字ファスナーですがJ字財布とも言えます。

■ 表面の素材感

表面の素材はイタリア産の牛革。ムネカワ独自加工の「ブッテーロ」という素材を使用しています。植物性タンニンなめしを施したヌメ革です。薬剤の臭いが少しだけ感じられるものの、革の良い香りが漂います。

使い始めはマットですべすべとした質感ですが、使用していくうちに美しい光沢が出てくるそう。

■ 内側の仕様

L字ファスナーをぐるりと開けると、マチが広がって中央のコインスペースが大きく開きます。このコインケースは底から浮いた状態で短く作られており、底面スペースが一枚革でフラットに作られています。これがこの財布の大きな特徴で「U字構造」と言うのだそう。

このように、コインケースの下にくぐらせるようにお札を入れ込みます。コインケースと底面の間のスペースが広く作られているおかげで、公式サイトでは最大で15枚ほどのお札を収納できるとの記載がありました。

コインケースの側面を囲うように収納することもできます。U字状の入れ方で札の端が折れるのが気になる、札の端がバラバラになってまとまらないというときはこちらの使い方も良いでしょう。

コインケースは間口が開いた状態で、開閉のひと手間は必要ありません。マチが大きく取られており、視認性が抜群に良いです。先述したように底面までスペースを設けておらず宙に浮いているため、指が届きやすくなっているというのもメリットです。

コインは10枚~15枚ほど収納できます。日常仕様では困ることは少ないでしょう。

財布全体を覆う革とコインケースには、少しのスキマがあります。このスキマとコインケースの間口が開いた状態ということで、コインが飛び出していかないか不安がありましたが、実際にファスナーを閉めて逆さまにしてもコインが動く様子がありません。両サイドの革と大きなマチが内側に折り込まれ、コインをしっかりホールドしているようです。

カードスロットは片面に2箇所、そしてもう片面にフラップポケットがあります。フラップポケットは5枚~7枚ほどをすっきりと入れられます。

ムネカワのカード入れはフラップタイプも備えているため、いろいろと試してみたうえで自分にベストな使い方を決められるのがうれしいです。これは、お札の収納方法にも同じことが言えます。

■ 内側の素材感

コインケース内側とフラップポケットの内側は日本製の豚革を使用しています。強度が増して摩擦やスレに強いため、ものの取り出しやすさや長く使用していくうえの重要な役割を担っています。

豚革独特の毛穴の大きさがアクセントになっており、なめらかな表面のブッテーロと対比してとてもユニークです。

■ 縫製

表面の縫製はきれいです。言うことはありません。

内側の縫製はよく見ると少しつっている箇所がありますが、普通に使っていて気づくことはありません。ステッチ穴を圧迫して革が隆起しているようです。

ムネカワの縫製のこだわりに「返し縫い」があります。負荷のかかりやすい場所は3重にも重ねて縫製しているそう。確かにコインケースのマチ部分は何重にも縫い目が確認できます。

■ ファスナー・持ち手

ファスナーはYKK3号。細身で軽く、軽快な操作性です。

ひとつ残念なのが、上止(ファスナーの末端)までしっかり閉まり切らないこと。しっかりファスナーを閉じ切っても、このようにゆっくりと下がってきてしまいYの字状態になってしまいます。

このように上止まで閉まり切らない財布は幾多もありますが、使い勝手を考え工夫しているアイデア豊かなムネカワだからこそ、縫製の美しさは今後の課題として考えていただくのが良いかと思います。

【2023年9月11日追記】

課題となっていたファスナーですが、同じくYKKのエクセラの両開きファスナーに変更となりました。

それにより、たくさん内容量を入れても最後までしっかり閉まるようになりました。私自身実際に使ってみてこの点は気になっていたので、この改善は評価できます。

常に課題としっかりと向き合い、より良い製品作りに努めている姿勢はどのブランドも見習うべきところです。

ファスナーのツマミは表面の素材と同様のブッテーロを使用し、付け根に近い部分にかまぼこの結び飾りのような装飾が加えられています。

単色カラーのシンプルな財布に遊び心が添えられるとともに、指でつかんだ時のほどよいアクセントを感じさせてくれて、直感的に良いなと感じました。

ブログでは、持ち手が好みでない場合「革の引き手を切っていただいて構いません!」との記載もありましたが、私個人としては良い役割を担っているパーツだと思います。

【総評】

ムネカワはコンパクトさと機能性を両立させるために、例えばコインケースの配置やサイズを調整することで取り出しやすくしたり、収納の増減を見越した配置にしているなど、ひとずつのスペースやパーツに理由付けをしていることが分かります。

また、壊れにくさのこだわりは、できるだけパーツを少なくすること。「複雑なパーツを重ねるほど手が込んでいて強度が増すのでは」と思っている方もいるかもしれませんがそれは間違いで、商品を構成するパーツが増えるほど糸切れや破損の頻度も増えていきます。

ムネカワのアイテムはパーツ数をできるだけ抑えることで過度な縫製を減らし、修理の頻度を少なくする工夫をしているそうです。

シンプルながらも考え抜かれてできた財布がCramです。

設立年1999年
主な価格帯23,650~40,000円
年齢層30代~50代と幅広い
製造地日本
品質高品質

【追記】大阪の直営店に行ってきた

大阪・御堂筋線の大国町駅から徒歩1分の場所に工房と直営店を兼ねた建物があります。1階が工房で2階が直営店です。

階段を上るとそこにはお洒落なアンティーク家具、そしてその上には綺麗に並べられた革製品があります。

決して品数は多くありませんが、スタッフから直接財布の仕様を聞く場所として、そしてムネカワの雰囲気を感じ取れる場所としてしっかり機能しています。

今はコンパクト財布が人気ということで、今回レビューしたCramはもちろん様々なタイプのミニマムな財布がありました。

ちょっと変わった財布が欲しいというニーズを持った人も訪れるとのこと。確かにどれもそれに応えられるだけの個性溢れる財布です。

これらの財布は少人数で外注もほとんどせずに1階の工房で1から作り上げているとのこと。愛着を感じられる財布がここで作られています。

お近くの方は是非行ってみて下さい。

目次