【評価:85点】土屋鞄の解説と財布徹底レビュー

土屋鞄は50年以上の歴史があり、多くの方に認知されている人気の革ブランドです。直営店が多くて手に取って見る機会が多いのはありがたいです。

今回は日本を代表する革ブランドの一つである土屋鞄製造所について詳しく解説し、財布のレビューもしてみたいと思います。

目次

土屋鞄の解説

1965年にランドセルメーカーとして創業した土屋鞄製造所。当初たった2人で始まった「子どもたちの6年間をしっかりと支える鞄」造りは、時を経て業容を拡大し、今では大人向けの鞄や財布など、多くの人の相棒となる製品を生み出しています。

※丸の内店

「皮」を鞣すことによって「革」を造り出す人間の知恵は、古来多くの「丈夫な」道具とし使われてきました。それは人が身に付ける服に始まり、過酷な競技で人の身体を守る防具として、そしてまた英国などでは圧倒的な堅牢さとしなやかさが求められる馬具として。

常に活発に動きまわる子どもたちの傍らにあるランドセルは、これらの中でも、革にとって最も過酷な条件と言えるかもしれません。

土屋鞄の生む革製品が、そのような環境下でも耐久性を持ち、子供やその親に満足を与えてきたことは、創業50年という実績が物語っています。そしてこのような長い歴史を持つ革製品を手にするということは、その系譜を含めた価値を手にするような気がします。

※名古屋店

土屋鞄では熟練の職人さんだけでなく、若い職人さんも多くモノ造りに関わっておられるとのこと。ユーザーに愛される商品は、それを生み出す作り手側も惹きつける商品ということでしょう。

ちなみに土屋鞄のロゴになっている「L」マークについて土屋鞄のスタッフに聞いたのですが、これは「L」ではないそうです。

よく間違えられるとのことですが、「革包丁で革を切っている様子」を表しているのです。

確かによく見るとそうですね!

長財布レビュー

2025年で60周年を迎える土屋鞄から、ブライドルレザーロングパースをレビューします。

■ 素材感

土屋鞄のブライドルレザーは、イギリスの老舗タンナー「J&E セジュイック社」のもの。現在でも馬具用品用の革を仕立てているメーカーのため、ハードに扱ってもへこたれない耐久性と耐水性を持ち、世界中の馬具製造業者へ卸されています。また、その品質の高さから鞄や小物類の素材としても人気があり、皮革商品を展開する著名メーカーでも多く採用されています。

実際に手に触れると革が厚く弾力があり、幾方向にも塗りこまれたロウの跡が見て取れました。毛穴はほとんど目立ちませんが、キズ跡やトラなどの天然の証もしっかり残っています。

ブライドルレザーの証である表面の白い粉「ブルーム」は薄め。既にささやかな光沢が現れ始めており、しっとりした心地良い感触です。

個体差があるためすべての財布が同じ状態とは限らないものの、これからさらに艶が増して美しい透明感と出会えるのはこの財布を手にした人の共通の楽しみで心が踊ります。

内装はブラウンカラーの牛革。マットなスムースレザーで涼やかです。内と外では印象が大きく異なりますが、不思議とマッチしているのはどちらも丁寧に仕上げられた品質の高さと高級感があるからでしょう。

■ サイズ感

公式スペックは縦9.8cm、横19.3cm、厚み2.3cm。長財布によく見られるベーシックなサイズですが、革のワイルドさからか大きく見えます。片手でがっしりと掴んでみると、その存在感は抜群です。

■ コインケース

コインケースは財布中央に配置されています。

素晴らしい事に、コインケースのファスナーのツマミが外装に響かないよう縦幅が低めに作られているとのこと。

実際、多くの財布は縦幅ギリギリまでコインケースを作っており、ファスナーのツマミが外装のファスナーに干渉し使い勝手に影響しているものが目立ちます。

こちらは外装とコインケースの間に充分な余白を作っているおかげで外装のファスナーの可動がスムーズです。多少収納物が増えたとしても口を閉めきり、かつ表に響きにくくなります。

◇コインケースが低い場合

自然なカーブができる

◇コインケースが縦幅いっぱいの場合

角度がつき表がスレやすい

縦幅だけでなく横幅も若干短めに作られていますが、長財布ゆえ容量に不足はありません。片マチ式でコインケース全体がしっかり見渡せます。

■ 札入れ

札入れはコインケースの両サイド2箇所。コインケースが小さめに作られているため、笹マチは内側にすぼまった状態です。コインケース側に札を入れようとすると窮屈になるため、カードスロット側に沿うように収納します。

マチの蛇腹は大きめですがそこまで邪魔になりません。

■ カードスロット

カードスロットは財布背面の両サイドに6箇所ずつ、計12箇所あります。

横幅は9cm強でカードの横幅約8.5cmに対してタイトめです。実際にカードを入れてみると、少々圧を感じるもののきつすぎるということはありませんでした。複数枚収納はできませんが、使い続けるうちに革が馴染んでより使いやすくなっていくでしょう。

■ フリーポケット

フリーポケットはカードスロットの奥の最背面に両サイド1箇所ずつ、計2箇所あります。内装の革は薄くしなりが良いため、マチがないポケットでも開きやすくものの出し入れがしやすいです。

■ ファスナー

メインファスナーはYKK5号です。務歯(エレメント)のがたつきもほぼなく良い音を立てて滑らかに動きます。ツマミは外装と同素材のブライドルレザーで長さは4cmほど。芯材が入っていると思われ、硬く丈夫に作られています。

コインケースのファスナーはYKK3号。ツマミは内装と同じスムースレザーで3cmほどの長さです。充分な大きさのツマミがつけられるのはコインケースが低く作られているおかげでしょう。

■ 縫製

美しく縫製されていますが、縫い穴が大きく見えます。ブライドルレザーのようなハリのある素材は、柔らかく弾力のある革に比べてポコポコとした穴の存在感が出やすいからでしょうか。ただし、肉眼ではほぼ分からないので気にするほどではありません。

■ コバ

コバは丁寧に処理されています。

仕上げの方法は薄く革の断面が見えるため切り目本磨きだと思われます。光沢の仕上げ材が使われており、財布を使うたびに各パーツのコバが光ります。この部分を良きアクセントと捉えるか、悪目立ちすると捉えるか…ユーザーによって好みが分かれるところです。

■ レビューのまとめ

ブライドルレザーの見た目の豪快さの反面、使い勝手を充分に考えられた内装スペックにあたたかい優しさを感じます。

使いはじめは外装と内装イメージの違いを楽しみ、次第に革が経年変化し両者が馴染む様を見届けていくのはユーザーにとっての喜びになるでしょう。

個性的なのに品があり、実用的でクセがない、こだわりを貫く土屋鞄の魅力が詰まった長財布です。

他のブランドと比べてどうか?

土屋鞄とよく比較されるブランドはココマイスター・GANZO・万双・キプリス・ユハクあたりです。

その中で土屋鞄が優れているのはユニセックスで温かみのあるデザインが多い点、そしてバッグの取り扱いが多い点です。

メンズ財布・メンズ長財布に関しては特別優れている点は無いかもしれません。特別価格が安い訳でもデザインが秀逸な訳でもありません。

詳しくはこちらのページで解説しています。

総評

歴史あるブランドだけあって革製品全体の品質は非常に高く、日本を代表する革ブランドの一つと言えるでしょう。

公式サイトは優しくて落ち着いた雰囲気が溢れていて、穏やかな気持にさせてくれます。

設立年1965年
主な価格帯30,000円~60,000円
年齢層30代~60代と幅広い
しかも男女問わない
製造地日本
品質高い

【追記】直営店に行ってきた

土屋鞄は日本国内で14店舗、台湾と香港を合わせると16の直営店を運営しています。

残念ながら北海道と東北にはありませんが、東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・福岡など主要都市は大体カバーしています。

土屋鞄渋谷店の外観
※渋谷店

卸をしていないのでデパートなどで購入することができないため、お客さんとの接点を増やすために直営店を全国に展開しているのだと思います。

土屋鞄という名前の通り鞄がメインのブランドであるため、店内も鞄の方が圧倒的に多いです。

ただし近年は財布にも力を入れているようで、財布のスペースが以前より広くなった印象があります。

ラインナップもミニ財布から長財布まで多くの種類を扱うようになりました。財布を見に行く価値のあるブランドだと思います。

人気ブランドトップ5
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