頑固な職人が手掛けるオーソドックスな革ブランド、それが万双です。取り扱い店が無く実店舗も少ないのが残念なポイントです。
あと、デザインに古臭さが見えるので若い人には向いていません。
このページでは、万双の解説、店舗レポート、そしてブライドルレザーの長財布レビューを詳しくしたいと思います。
1995年設立の万双は、「世界最高峰の品質」と「常識的な価格」を標榜する革製品ブランドです。「ブランド」と呼ぶことが万双のコンセプトに合っているかどうかわかりませんが、その製品を手にすると、この謳い文句が決して大げさなものではなく、モノ造りに対する真摯な姿勢が伝わってきます。
例えば財布造りにおいて、全体のデザインや素材に比べると目立たない部分とも言えるコバの処理。財布造りの全行程の中で、実は最も時間をかけているという磨き上げられてたコバは、美しい一枚の壁のようで、革の接合面が全くわからない程です。
加えて独特なスティッチラインや、シンプルなデザインなど、いずれにもこだわりが感じられます。
またその価格は「常識的な価格」というよりも、「想像を上回る(下回るでしょうか)価格」と言えるかもしれません。HPを見ただけでは、価格相応の品質なのか、それを超えるものなのかは中々判断がつきませんが、実際に製品を手にとると、他の革財布ブランドと較べても高い品質を保ちながら圧倒的に安い価格に驚かされます。
また万双の財布には、どこにもブランドロゴが見当たりません。
少しさびしい気もしましたが、「人様の鞄に自分のところの名前が入っているのがおかしい(公式サイトより)」という思いからとのこと。店を構えたときに、前の店の名前をそのまま引き継いだだけという「万双」という名前の由来からも、異色とも言える職人気質が見え隠れします。
東京のJR御徒町駅の北口を出て右を向くと横断歩道があり、その先に有名なアメ横という商店街があります。
お店はその中にあります。ホームページには「狭い店舗ですが」って書かれていましたが、まさかここまで狭いお店だとは思っていませんでした。笑
ショーケースもあって、小物類などが陳列されていました。
店内は9割以上はカバンで占められています。残念ながら財布はあまりありませんので、財布を買う目的で行くと肩透かしを食うことになります。
ただし、鞄が気になっている方は実物がたくさん見れて良いと思いますし、万双のこだわりとかより詳しい商品の説明を聞くのもおすすめです。
店員の方は親切に色々お話して下さいます。
40代以上の男性だと財布を買うのにデパートに行く方も多いと思います。しかし万双はデパートへの卸は一切していないそうです。従って、万双の商品が買えるのはこの店舗かウェブサイトのみ。
何故かと言うと、デパートに卸してしまうとデパート側が売上の半分を持っていってしまい、それを考慮した値付けをせざるを得ないとのこと。
つまり、値段が高くなってしまうわけですね。
そして一つ印象に残っているのが、
「同じような鞄がここでは市場価格よりも安く入手できますよ。」
とおっしゃっていたこと。
その言葉が気になって帰ってから同じようなバッグを他社と比較してみたところ、それは事実であることが分かりました。
例えばこのブライドルレザーのブリーフケース。他社では同じような製品が150,000円前後で販売されています。
しかし万双では82,500円です。
他にもバッグに限らず財布や小物類などあらるゆ商品で価格差が確認できました。
広告費を省く・直販だけにする・自社で職人を抱えるなどによって安く販売することが可能なのだと思います。
コードバンというと、革の宝石・ダイヤモンドとも言われ、農耕馬の臀部(でんぶ)から僅かに採れる希少皮革です。表面の繊維が非常にきめ細かく、美しい光沢をたたえ、強度もある丈夫な革は、革財布に求められる多くの条件を満たしており、様々なメーカーからコードバンの長財布が発売されています。
その中でも、万双のコードバン長財布は、他社のコードバン長財布と較べていくつかの大きな特徴を持っています。その辺りを順を追って見てみましょう。
まずはサイズですが、一目見てそのコンパクトさが目をひきます。コンパクトなコードバン財布と言えばGANZOのコードバンファスナー付き長財布などがありますが、それとほぼ同等、もしくは若干コンパクトです。
公式サイトにも、比較的年齢層の高いエグゼクティブ層に向けた財布として、スーツポケットの膨らみを抑える設計を施した旨が書かれていますが、その通りの仕上がりになっていると言えるでしょう。
(左:GANZOコードバンファスナー付き長財布 19.0 x 9.0 x 1.8cm、右:万双コードバン長財布-小銭入れ付き19.0x8.5x1.9cm。)
次に外装で目をひくのが、独特のスティッチラインです。革に菱形の縫い目を開けて、通した糸を引っ張る「菱縫い」で、斜めになった縫い目が綺麗に等間隔で並んでいます。
ネイビーの本体色に対して、スティッチラインが生成りの色で、コントラストになっているのも目をひきます。高級なコードバンに、軽やかさを加えているようで好印象です。
本体の色としては、ネイビーとボルドーの2色展開となっています。今回購入したのは写真のネイビー色ですが、他社のコードバンに較べて少々マットな風合いになっているように感じます。
これに較べて、ココマイスター始め、他社のコードバンでは、購入時から光沢感・艶がかなりあります。(写真下は、マイスターコードバン・ハイフライヤー)
個人的にはせっかくキメの細かいコードバンですので、「艶」のある仕上がりの方にコードバンらしさを感じます。
但し、いずれにしても購入後のメンテナンス次第で艶を出していくことは十分可能だとは思います。
万双が自らその「最大の特徴」としているのが、革の側面部分(外装と内装の革の合せ目に当たる部分)、いわゆる「コバ」の磨き込み処理です。実際このコバ部分をよく見てみると、革の合せ目が一切わからないほどに、フラットに磨きこまれていることがわかります。
このコバ処理は相当時間のかかるもので、「全作業工程の中で、最も時間を費やす作業と言っても過言ではない」(万双HP)とのこと。各社ともコバの美しい処理には力を入れていますので、一概に万双のコバ処理が最高とは言い切れないと思いますが、切り立ったストレートラインでありながら一枚革のように見えるコバ処理は、確かにシャープな美しさを感じます。
また、財布本体の側面だけでなく、内装のポケット部分の側面も綺麗に磨かれています。内装は明るいベージュのヌメ革に対して、側面をマットな黒としているため、磨きこまれたコバがより美しく映えるように思います。
カードポケットはデザイン的には特段変わったところもないのですが、収納枚数を10枚に抑えた上で、ポケットの深さも少し浅めにしてあることで、カードの確認と出し入れがしやすいように配慮されています。
ただ他社のデザインに多く見られるような、札入れ内部へのカードポケット設置は行われていません。
札入れは収納枚数約20枚とされており、実際に入れてみると、丁度お札の上端が隠れる程度に気持ち良く収まります。
また小銭入れについては、ファスナーの末端部分が縫い合わせ処理などされておらず、切れ込みが深いため、マチが無い割には奥の方の小銭も取り出しやすくなっているように感じます。
そして最後になりましたが、他社のコードバン長財布と較べて一番の違いといえるのは、やはりその価格でしょう。コードバンの財布といえば、各社とも最高ランクの価格で、おおよそ4万円台後半から7万円程度というのがその相場です。
ところが万双のこのコードバン長財布は税込みで35,750円という低価格です。それでも上で見てきたように、品質や機能は非常に優れており、他と比べて決して遜色ありません。
デザインなどの好み次第では有力な選択肢になる財布だと思います。
価格 | 35,750円 |
---|---|
レザー |
表面:国産コードバン |
縫製地 | 日本 |
万双の特徴は、広告費を省く・直販だけにする・自社で職人を抱えるなどによって低価格を実現していることです。それは我々消費者にとって大変ありがたいことであり、大きな長所です。
一方で短所も2つあります。
1つ目は実物を手に取って見られる機会が非常に限られること。上野の店舗には財布があまり無いので公式サイトや当サイトのような情報サイトが頼みの綱です。
2つ目はデザイン面での真新しさや華やかさがあまり無いこと。クラシックな財布が好みの人には良いですが、そうでない人には物足りないかもしれません。
万双はステッチラインを際立たせているのが特徴ですが、逆にそれが苦手な人も一定数いるかと思います。
以上のような理由から否定的な意見も多少あるものの、高品質な日本製革製品を安く購入できるのはやはり大きな強みです。今後も継続してウォッチしたいと思います。