きめが細かく美しい輝きを持ち、革の宝石とまで称される皮革、コードバンを贅沢に内外装に使用したシェルコードバン・スタンフォード。
一頭の馬から採取できる量が少ないこともあり、全面に採用すると価格もかなりのものとなってしまいますが、その分財布全体から放たれる上品な雰囲気は代えがたいものがあると言えるでしょう。
多くのカードポケットを備えるなど、実用性も併せ持った一品です。
とりあえず公式ページを見たい方はこちらからどうぞ。
【価格】110,000円(税込)
シェルコードバン・スタンフォードのレビュー
■ 表裏両面コードバンの贅沢仕様
「コードバン(Cordovan)」は、スペインのコルドバ地方にその名称の由来があると言われ、農耕馬の臀(でん)部からごくわずかに採取することが出来るという希少皮革です。
「シェル(shell)」は動物の表皮の下にある繊維のこと。分厚い皮に覆われた馬のお尻の下層にある2ミリほどの繊維層は、非常に極め細かく、滑らかな手触りと、使うほどに増す輝きをもたらします。
また、その強度は牛革の数倍とも言われ、エイジングの楽しみと共に、まさに一生ものの財布にふさわしい皮革と言えるでしょう。
この「希少性」や、表皮の下から発掘するような「採取方法」、そして何と言ってもその滑らかな「輝き」と「硬さ」から、しばしば「革のダイヤモンド」と呼ばれるのがコードバンです。
■ 少しくすんだような輝き
ココマイスターのコードバン財布には、国産皮革を用いる「コードバン長財布」や「マイスターコードバンシリーズ」などいくつか種類がありますが、シェルコードバン・スタンフォードに使用されているコードバンは、米シカゴ・ホーウィン社製のもので素材の出自が異なります。
両面にコードバンを使用している事もあり、価格的にも他のコードバンシリーズの倍近い価格設定になっていますが、その見た目はどちらかというと、購入時点ではくすんだような印象です。
こちらの写真は、今回入手した「シェルコードバン・スタンフォード(95,000円)」、同じシリーズのラウンドファスナータイプ「シェルコードバン・アーチデューク(120,000円)」、そして以前入手した「マイスターコードバン・ラスティング(48,000円)」です。
このように並べてみると、マイスターコードバン・ラスティング(真ん中)が抜きん出て輝きが美しく、シェルコードバンシリーズは少しくすんだように見えます。
またスタンフォード(本レビュー・写真左側)とアーチデューク(右側)で比べると、特に前者は、まだらの霞(かすみ)がかかったようになっていました。
「シェルコードバン」に関して公式サイトには次のような説明があります。「最初はマットな風合いで、一目光沢感はあまりない表情」「極限まで自然の風合いを残す仕上げ」。この表面にかかる白い霞は、ココマイスターのコードバン特有とされる、ロウの吹き付け加工によるものと思われます。
この吹き付け加工には、かなり個体差がありそうです。ロウは気になるようであれば、柔らかいクロスで拭き取ってしまうことも出来るような記述もありますが(公式サイト)、手元のスタンフォードについては、取り去ることが出来ませんでした。
いずれにしても、「使用するうちにロウが革に馴染み、独特の光沢感・高級感を演出する」となっていますので、この点に関しては革を育てていくつもりで期待をしたいと思います。
■ 奥深い独特の輝きをもつ内装
基本的に外装と内装で使用している革は同じ(シェルコードバン)筈ですので、その見た目や質感も内外装で同等だと思いますが、手元の固体については、内装は外装と全く異なる輝きを、最初から放っていました。
それはおそらく、本来のシェルコードバンの輝きであろうと思われるもので、革にたっぷりと含まれたオイルと、きめ細かい繊維質の表層が融合したような、奥深い輝きです。上述のロウの吹き付け加工の具合によって差異が生まれているのだと思いますが、これを見ると外装の革が経年変化で育っていくのが楽しみです。
■ しっかりした縫製と実用的なカードポケット
この財布の見所は、何をおいてもやはり「シェルコードバン」という素材にありますので、革についての説明が長くなってしまいましたが、財布本体の縫製・コバの仕上げ・機能性・実用性はいずれもココマイスターの面目躍如と言えるもので、しっかりしたものに仕上がっています。
まず重さですが、143gと内装にオイルレザーを用いた他のコードバンシリーズよりも一段と軽く、また写真のように、芯があるのに柔らかい革は厚みを感じさせません。
お札については、片マチタイプの為、多くを入れる仕様にはなっておらず、小銭入れもあまり膨らませて使用する前提にはなっていません。
しかし、その分カードポケットが14と、大きなフリーポケットが2つ装備されており、スマートにカード決済する大人の財布といった感じでしょうか。
最高級で頑強な皮革とオーソドックスなデザイン、間違いの無い造りは、飽きが来ず、長くパートナーとするにふさわしい一本と言えると思います。
価格 | 110,000円 |
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レザー | 全面的にシェルコードバン(米国製)を使用 |
縫製地 | 日本 |