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【よく分かる革講座】革の種類や特徴などをまとめてみた

一般的に「皮革(ひかく)」という言葉がありますが、「皮」と「革」の違いはご存知でしょうか?またその違いはわかっていても、「革」の素材や加工方法には様々な種類や組み合わせがあり、結局良く違いがわからずに革製品を購入するケースも多いと思います。

 

ここでは、そういった方々に向けて、また私自身の勉強の意味も込めて、革製品選びの基礎知識として知っておくべき「革」についてのイロハを、主に革の原産地である海外のソースに当たりながらまとめてみました。
革への知識を深めて、より製品に愛着が持てればと思います。

■革は歴史上最も古く偉大な発明  〜 革の歴史

革は人類の歴史上、最も古くて偉大な発明とさえ言われています。狩猟によって得た獲物を食用にし、その皮を加工することで衣服や靴を作るといったことは、人間にとって間違いなく最初期の活動で、その歴史は、人類の歴史とほぼ同じ長さを持ちます。

 

動物から得た皮は、そのままではすぐに固くなってしまいます。そこで、より柔軟性をもたせ、且つ丈夫にするために、様々な工夫が施されました。例えば、皮を動物から採取した油脂でこするといった様子が、アッシリアの文章や、ホメロスの叙事詩などに描かれています。

 

 

エジプト時代には、革の加工技術はかなり洗練されたものとなりました。紀元前5000年頃の壁画には、衣服、手袋、靴、その他各種の道具などに革が用いられる様子が描かれ、防具、装飾品なども造られるようになります。

 

また2008年にはアルメニアの洞窟から、5500年前のものと推定される「世界最古の革靴」が実際に発見され、ギネス世界記録として認定されています。

■皮と革の違いは「鞣し(なめし)」にあり

 

上でも少し触れましたが、動物から得た皮は、そのままの状態では衣服や道具として使うのに適したものではありません。そのままでは当然腐敗が進み、また気温が低い状態では固くなり、耐久性もありません。この変化の激しい「皮」に、「鞣し(なめし)」工程を施すことで変化が少なく、柔らかく、安定して使用できるようにしたものを「革」と呼びます。

 

余談となりますが、日々生産される革製品の約5割は「靴」になると言われています。残りの5割の内、大雑把ですが半分が衣服、更にその半分が家具、そして残りが小物類などになっていると推定されます。

 

本稿では主に革製の財布や鞄を想定していますが、国内外のWEBサイトなどで、「革」について調査すると、靴を対象としたものが多いのは、このためと言えるでしょう。

■皮の保管

動物の皮を「鞣す(なめす)」ことによって得られる革ですが、一口に鞣しと言っても、家内制のように小規模なものから大規模工場で行うもの、何ヶ月もの時間と手間暇をかける昔ながらの伝統工法から、クロム鞣しのように短期間で工程が完了するものまで様々です。

 

準備段階として、保管期間のバクテリアの繁殖を抑え、たんぱく質(コラーゲン)の防腐を目的とした塩漬けが行われます。これによって、浸透圧の違いで皮から水分が除去され、バクテリアが繁殖できない環境が生まれます。高濃度・高圧力で約1ヶ月の塩漬けを行ったり、塩水に約16時間浸す、また、他にも極低温状態で保管する方法などが取られます。

■なめしの準備作業

 

ソーキング

皮を水に漬けて、保管期間中の塩抜きと同時に、水分を含ませることでその後の加工を行いやすくします。ソーキング期間中も、バクテリア増殖防止措置が別途取られます。

石灰漬け(ライミング)

ソーキング後の皮を、石灰乳(milk of lime)で処理します。これは、毛や角質の除去、ムチンなど繊維間の余分なタンパク質の除去、動物性油脂や脂肪分の除去、コーラゲンの状態の鞣しへの適正化などを目的とします。

脱毛

ライミング処理後に皮の表面の毛を除去します。現在ではほぼ機械で処理をした後、一部手作業での処理が行われたりします。(スカッディング)・脱灰(デライミング) --- pH濃度を下げて酸性化(酸を加えることでアルカリ性を中和)することで、ライミング工程におけるカルシウムを沈殿させます。また、これによって、鞣し工程においてタンニンが皮に浸透しやすくなります。

■知っておくべき「鞣し」の種類とその特徴

 

鞣しの方法には、古来、人の唾液を用いたり、魚の油を用いるような方法に始まり、下に挙げた以外にも多くの種類やバリエーションが存在します。特に革財布の購入に当っては、最初に挙げた2つ「植物タンニンなめし」と「クロームなめし」の概要を把握しておくと良いと思います。

植物(vegetable)タンニンなめし

植物の樹皮や幹、葉、果実、根などに含まれるタンニン(しぶ)成分を用いた鞣し。当サイトで扱うような、高級革財布の多くはこの植物タンニンなめしによって造られる革を素材としています。
皮にタンニンを浸透させると、コラーゲンたんぱく質がコーティングされ、バクテリアの影響を受けにくくなり、また安定した性質を持つようになります。

 

ただし、このタンニンを皮の奥まで浸透させるのは、簡単ではありません。そのため、タンニンの濃度を徐々に高くした数十もの槽を用意して、漬け変えていくという気の遠くなるような作業が行われ、必然的に手間暇とコストのかかる工法となってしまいます。

 

一般的にタンニン鞣しでは、固く堅牢で可塑性に優れた革が得られ、鞄や靴底などの成型を必要とするものや、クラフト用途に適しています。切り口(コバ)は茶褐色。使い込む内に、飴色へと経年変化が見られるのも、タンニン鞣しの特徴であり、醍醐味と言えるでしょう。但し、次のクロームなめしに比べると、水気に弱く、その点扱いには注意が必要です。

 

また高温の水中に浸すと、大きく繊維が縮んで硬直する性質から、これをボイルドレザーと呼び、歴史的には革鎧(レザーアーマー)や、本の装丁などとして用いられました。

 

クロームなめし

1858年に開発された手法で、三価クロムを使用し、植物タンニンなめしに比べて、よりしなやか(supple)で、成型しやすい(pliable)特徴を持ちます。

 

特に水分に弱い植物タンニンなめしに比べて、色落ちや型崩れもしにくく、クロームから抽出される色から、wet-blue(ウェットブルー)と呼ばれることもあります。着色もより容易な上に、通常、クロームなめしにかかる時間は約1日で済むことから、全皮革の内、現在では約80%がクロームなめしと言われています。但し、焼却処分の際には有害物質が出て、環境的な問題があるとも指摘されています。

コンビネーションなめし

上記の、植物タンニンなめしと、クロームなめしを組み合わせたものになります。

アルデヒドなめし

グルタルアルデヒドやオキサゾリジン化合物を用いた鞣しです。白味を帯びていることから、wet-white(ウェットホワイト)とも呼ばれます。クロームフリーレザーの代表格です。幼児用や車用の靴の素材として多く用いられます。

セーム革(Chamois leather)

アルデヒドなめしの一つで、多孔質で水分を吸収しやすい性質を持ちます。魚油(伝統的には、たらの油)を酸化することで生まれるアルデヒドによってなめします。

ローズなめし

ピュアローズオットー油を用いて、製造後何年もたってからでも、バラの香りが匂いたつと言われます。地上でもっとも価値のある革と称されることもありますが、これは主にローズオットーのコストと、人手を要するなめしプロセスによるところが大きいようです。

■革の種類 (動物別)

 

ここでは、原材料となる革の種類について、代表的なものを例示してみたいと思います。一度は耳にしたことがある呼称も多いかもしれませんが、その意味や特徴まで把握している方は少ないのではないでしょうか。

【牛革】

食肉の副産物として生まれる牛革は、安定的な供給が可能であると共に、最もポピュラーな革です。オス・メスの別や、年齢によって、革の呼称や特徴が変わります。

 

ベビーカーフ:生後3ヶ月程度までの仔牛から造られる革です。カーフ:生後6カ月以内の仔牛の革です。傷が少なく極めの細かさが特徴の高級皮革とされます。

 

キップ:生後6ヶ月〜2年以内の牛革です。極めの細かさはカーフより劣りますが、その分厚く強度があります。

 

ステアハイド:生後2年以上で、生後3〜6ヶ月の期間に去勢された雄牛の革。去勢されることで気性が穏やかとなり、結果、表面の傷も少なくなります。成牛で一頭から採れる皮の量も多く、最も一般的な牛革です。

 

カウハイド:生後2年以上で出産した雌牛の革。ステアハイドよりも薄く柔らかく、キップとステアハイドの中間のような特徴を持ちます。

 

ブル:生後3年以上の去勢されていない雄牛の革。分厚く、強度がある革となります。

 

ハラコ:死産になった胎児や、生後間もない仔牛から得られる革で、流通量、採取可能面積が少なく、希少性の高い革です。

【馬革】

特に臀部の分厚い皮の内側の2ミリほどの層から採取されるものを「コードバン」と呼び、その希少性や、緻密な繊維、高い強度などから「革のダイヤモンド」とも称されことがあります。コードバンの革財布は、表面が美しい光沢を持ち、一般的な牛革では得られない品が漂います。

【豚革】

通気性があり、薄くて軽いのが特徴です。日本国内で多く生産されることから、海外にも輸出されることさえある、唯一の革です。牛革のように厚みを持たすことは困難ですが、その特性を活かして、バッグの内装などに使用されます。摩耗に強く、硬く半透明にも加工できるため、ランプシェイドなどにも使用されます。

【羊革】

薄く柔らかい革で、鞣した後も毛穴が残り、断熱性が高いため、ムートン(羊の毛皮)としてコートの素材などにも用いられます。

【ダチョウ革】

オーストリッチ。牛革よりも数倍強度があり、脱毛後の表面の突起が特徴です。

【ワニ革】

クロコダイルやアリゲーター。鱗模様を持ち、最高級皮革とされています。

【トカゲ革】

リザード。様々な模様のものがあり、財布用の革としても使用されています。

■革の種類 (仕上げ別)

 

同じ革を素材としていても、最終的な仕上げの仕方一つで、革製品の表情は様々に変化します。素材となる皮があり、それを鞣して、仕上げ工程を経ることで、最終的な製品の見た目や特徴が決定するというわけです。下に挙げる仕上げ・加工は、必ずしも同列に並べられるということではないのですが、比較的よく耳にするものをリストアップしてみました。

【ヌメ革】

植物タンニン鞣しを行った後、特別な加工を施さずにそのまま製品とした革です。プレインな表情は、経年変化で飴色に変化し、最も革らしい革と言うことが出来るかもしれません。

【スエード】

革の内側をサンドペーパーがけして起毛させたものです。多くは仔牛や子羊の革を用い、柔らかく、手袋の素材などとしても用いられます。

【ヌバック】

革の表側をサンドベーパーがけして起毛させたものです。毛足はスエードよりも短く、繊細で、しっとりした表情は外観上のアクセントになります。

【オイルレザー】

鞣しの工程に続いて革にオイルを含ませます。革に柔軟性と強度が生まれるとともに、中のオイルが表面に染み出すことで、メンテナンスも容易になるなどの利点があります。

【ブライドルレザー】

牛革に植物タンニン鞣しをした後、ロウを染み込ませることで強度を高めた革です。イギリスで長く馬具革として用いられ、表面にロウが白く浮き出る「ブルーム」が特徴です。

 

これらの他にも、仕上げ工程としては、染め、ワックス加工、型押し(エンボス加工)、防水加工、エナメル加工など、数多くの(ある意味一般的な)加工が存在します。

■「革」と「革製品」とその価格について

 

ここまで革の種類や製造工程、その特徴を見てきましたが、やはり実際に購入するとなると気になるのはその価格だと思います。
ここからは、革財布を選ぶ場合を前提としたあくまで一般論+私見ですが、やはり1万円台以下のものは、まず素材的に合皮や布が多用されているケースが多く、消耗品と考えるべきだと思います。

 

ある程度名前の通った国産ブランドで、2〜3万円以上のものは、縫製もしっかりしていて、お薦めです。その場合の価格は、各ブランドの方針もありますが、基本的には使用する革の組み合わせとその希少性で異なってきます。例えば、希少性が非常に高いとされるコードバンを内外装に用いたものですと、10万円クラスになるものもある一方で、堅牢性から非常に人気の高いブライドルレザーでも、内装にヌメ革が組み合わせてあると2〜3万円台から入手可能です。

 

他方、海外ブランドを選択する場合には注意が必要です。もちろんブランド品が好きで、海外ブランドを選択する場合も多いと思いますが、凡そのイメージとして、5万円程度の海外ブランド品ですと、国産ブランドの2〜3万円クラスよりも遥かに品質は落ちると思います。

 

これは、価格にブランド価値が織り込まれているというのが最大の理由に違いありませんが、もうひとつ現実的な違いとして、輸入関税の問題もありそうです。実は、革財布などの革製品は、仕上がった状態で輸入すると高率関税が適用されてしまうのに対し、製品になる前の「革」の状態で輸入すると、基本的に無税となっています。(2017年現在)

 

国産の革財布メーカーの多くは、欧州から「革」を仕入れて、国内で製品造りを行なっていますので、コスト面でこの恩恵を大いに受けていると言えそうです。

■最後に

高級革財布の多くは、手間暇のかかる植物タンニンなめしを用いて作られた革が多いのですが、中にはクローム鞣しの特徴を活かして美しく機能的なデザインが得られる場合もあります。
知識として、自分の持つ革製品がどのようにして出来たものかを理解しておくことで、愛着も更に湧いてくるに違いありません。本稿がその一助となれば幸いです。