まだ財布への関心も薄く、皮と革の区別もつかなかった頃、革財布の種類といえば、合成皮革なのか本革なのか、牛革なのかそれ以外(ワニ革など?)なのか、といったものだったように思います。
そこから本格的な革財布に触れるようになると、ブライドルレザーやコードバンという単語(革の種類)をあちこちで目にするようになります。特にブライドルレザーを初めて見た時には、白く吹き出る粉に違和感を覚えながらも次第にその魅力に取り憑かれていく、といった方も多いのではないでしょうか。
本稿では、革財布の代表的素材とも言えるこの2種類について、その奥深さを掘り下げて見てみたいと思います。
ブライドルレザー
■ ブライドルレザーの特徴
まず、ブライドルレザーは牛革です。
ブライドルレザーの最大の特徴は、表面に浮き出た「ブルーム」と呼ばれる白い粉状の紋様です。この粉の正体は、革の製造過程で、柔軟性と強度を持たせるために染み込ませたロウが浮き出てきたものです。
メーカーや個体によってブルームの状態は変わります。ここに掲載したブライドルレザーの場合も、入手時期の違いやシリーズの違いで濃淡の差がかなりあります。
▼こちらは、外装にブライドルレザー、内装に欧州産ヌメ革を使用した財布です。
このように個体差があるブルームですが、いずれも使用するうちに表面に馴染み、次第に艶へと変化していきます。
■ 英国で馬具革として使用された耐久性
ブライドルレザーの目に見える特徴がブルームなら、目に見えない特徴はその耐久性にあると言えるでしょう。
「ブライドル(BRIDLE)」というのは、手綱など特に馬の頭頂部周りにつないでの馬を操縦するための馬具を意味する言葉です。
かつて馬具の破損で事故が頻発した英国において、より堅牢なものが求められるようになり、生まれたのがブライドルレザーと言われています。
馬の操縦でかかる力や風雨にさらされても10年はもつ耐久性。繊細な意思を伝え、馬に傷をつけないしなやかさ。その両方を実現するために、化学薬品などを用いず植物タンニンで鞣した牛革に、ロウ(ワックス)を内部まで染み込ませ、革の繊維間の強度を何倍にも高めたブライドルレザーが生まれました。
コードバン
■ コードバンの特徴
次はコードバンですが、こちらは馬革です。
コードバンの特徴と言えば、なんといっても艶の美しさ、キメの細かさにあります。表面に「シボ模様」を持つ革とは対極で、コードバンは顔が映り込むほどの輝きです。
ブライドルレザーなどでも、表面のロウが馴染めばピカピカになりますが、コードバンの場合はそもそもの革の性質としてキメが細かいのです。
■ 革のダイヤモンドと呼ばれる由縁
コードバン(CORDOVAN)の名称は、スペインのコルドバ地方に由来すると言われています。19世紀から20世紀初頭にかけては、主にカミソリの歯を研ぐための革として用いられ、現代においては最高級の靴の表革や、高級腕時計のストラップ、そしてもちろん最高級の革財布の素材などに用いられます。
このコードバンには、「革の宝石」「革のダイヤモンド」と言う別称があります。これは、シワ・シボなどが無いフラットで美しい表面(non-creasing)を持つ為でもありますが、馬の臀部からわずかな量しか採れない貴重な部位を原料とすること、厚い皮に覆われた2ミリほどの単一繊維層を内側から削り取るように採取されること、などがその由縁です。
また二層構造になっている通常の革では、長年の使用で「浮き」と言われる剥離が起こる場合がありますが、単一繊維層のコードバンではこれがありません。
ブライドルレザーとコードバンの違い
ブライドルレザーとコードバンの違いを表にまとめました。
項目 | ブライドルレザー | コードバン |
---|---|---|
原皮 | 牛 | 馬 |
ツヤ | 最初は無い | 最初からある |
価格 (長財布) | 30,000円~40,000円 | 50,000円~80,000円 |
経年変化 | ある | 無い (劣化していく) |
一番注目すべきはその価格。もちろんブランドによって違いますが、ブライドルレザーの長財布は30,000円~40,000円ぐらいで買えることが多いです。
一方コードバンの場合、長財布だと50,000円は当たり前、日本製となると70,000円や80,000円することもあります。
しかしそれでも人気が高いのはコードバンです。当サイトでもコードバンのページの方が圧倒的に読まれています。
この輝きが多くの人を魅了しているのだと思います。
注意点としては、コードバンは最初から輝く美しさを放っていますが、経年変化はせず劣化していくため、日々汚れやキズが付かないように気をつける必要があります。
ブランドで選ぶコードバン【3選】
■ キプリス
キプリスでは最高級レザーを使用して最高レベルの技術集団が作っています。他のブランドの同種の財布よりも価格が抑えられているアイテムが多くあり、コスパが高いことで知られています。コードバンは全部で6シリーズあります。
中でも外装に水染めコードバン、内装にベジタブルタンニンレザー(ヌメ革)を使用したシリーズの長財布(上の写真)が40,700円と、他社よりも1万円程度安いです。デザイン的には普通ですが、品質と価格で選びたい方におすすめです。
設立年 | 1995年 |
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主な価格帯 | 20,000~35,000円 |
製造地 | 日本 |
【価格】40,700円(税込み)
■ ココマイスター
ココマイスターにはヨーロッパの高級皮革の素材と日本の職人の技術力から作られる「大人の雰囲気」を演出できるアイテムをが多くあります。1つ1つ職人の匠の技を駆使して仕上げることから、質の高さは常に評価され続けています。
コードバンの種類が豊富ですが、水染めコードバンを使用したシリーズ(上の写真)は特に光沢が美しくて色鮮やかなので大変な人気です。内装にヌメ革を使用したシリーズやイタリアンレザーを使用したものなど各種揃っています。
設立年 | 2009年 |
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主な価格帯 | 40,000円~57,000円 |
製造地 | 日本 |
■ CRAFSTO(クラフスト)
クラフストの製品は定番の人気レザーであるブライドルレザーとコードバンで構成されていて、デザイン的にも洗練されています。長財布の他にミニ財布も取り入れており、中でも写真のL字ファスナー財布が人気です。
コードバンにおいてはアメリカ産のシェルコードバンのみを使用しています。長財布は内装にイタリアンレザーを使うことで価格を抑え、他社と比較して数万円ほど安い価格で購入できます。
設立年 | 2020年 |
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主な価格帯 | 20,000円~50,000円 |
製造地 | 日本 |
【価格】45,900円(税込み)
コードバンで特におすすめの財布
1 マイスターコードバン・スカイスクレーパー
この財布の特徴
マイスターコードバンシリーズはレザーと同じ色でステッチされており、コードバンの高級さや高貴さがぎゅっと凝縮されています。まさに大人のラウンド長財布です。
ブランド | ココマイスター |
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価格 | 71,000円(税込み) |
評価 | |
備考 | 国産水染めコードバン使用・内部はイタリアンレザー・日本製 |
2 マイスターコードバン・ハイフライヤー
この財布の特徴
こちらは上と同じくマイスターコードバンシリーズの折り畳みタイプです。中を開くとヌメ革ではないオイルレザーが表れ、コードバンとのコントラストを楽しむことができます。
ブランド | ココマイスター |
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価格 | 68,000円(税込み) |
評価 | |
備考 | 国産水染めコードバン使用・内部はイタリアンレザー・日本製 |
まとめ
以上、ブライドルレザーとコードバンの違いでした。
ブライドルレザーとコードバンについては以下のページでより詳しく解説しています。ブライドルレザーの財布をお探しの方は以下のページからご覧下さい。